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農業共済団体が発行している機関誌のご案内です。

2014年11月


 

11月2週号
【仁淀川町】思い出の場所守る
        会社立ち上げ雇用創出へ/岸本 憲明さん

 仁淀川町別枝地区の沢渡集落で農業を営む若者がいる。岸本憲明さん(32)=同町森=は若者の農村離れ、農家の高齢化が進む中、「地域を守りたい」との思いから沢渡で茶の栽培と加工品の製造販売に意欲的に取り組んでいる。

 「ここ、沢渡が好きなんですよ」と岸本さん。沢渡は毎年2月11日に行われる「秋葉まつり」で有名な秋葉神社に程近い集落。岸本さんは、高知市出身だが、沢渡は祖父母が住んでおり、小さい頃から茶摘みに行ったり、祭りに参加するなど、たくさんの思い出が詰まった特別な場所だった。
「思い出の場所を守りたい」と岸本さん

 「思い出の場所を守りたい」との思いで、高知市から転居したのは24歳のとき。会社勤務の傍ら、祖父母の農作業を手伝う日々が始まった。「転居は一大決心。妻の同意を得るのが大変でした」と当時を振り返る。
 三年前、祖父の病気をきっかけに農業で生計を立てることを決意。会社を辞め、茶1f、シキミ50eなどを引き継いだ。さらに、高齢で管理できなくなった地元農家の茶畑栽培も引き継いだため、岸本さんの管理する茶畑は現在1.5fになっている。
 農業を始める時、普通に茶の生産・出荷だけでは、生計を立てることに限界があると感じていた岸本さん。茶に付加価値を付け加工、販売することを目指して煎茶「沢渡茶」や紅茶「香ル茶」を商品化し、町内外のイベントで販売した。
 消費者と直接接して販売するなかで「喰い付きが良くなかったんです。買う人から見れば、どれも同じに見えたのかもしれない。他との差をどうつけるかが大事。お茶以外の製品の必要性を感じました」と話す。
「ビバ沢渡」が加工販売している8商品

 その後、周囲の協力を得て、茶葉がそのまま食べられる「沢渡の茶大福」や、キャップに詰まった粉茶をひねり落として煎茶にする「さわたりふり茶」などのアイデア製品を完成させた。徐々に注目を集めるようになり、今年4月、満を持して株式会社「ビバ沢渡」を設立。
 会社設立後の苦労について「製品開発もありますが、一番は販路の開拓でしょう。こればかりはいろんな人とのご縁ですから」と話す。
 会社の将来については、「もし、自分と同じように地元へ帰って働きたい思う人の雇用の受け皿になれればと思います。故郷に帰りたいが、働く場が無いから帰れない人はいると思うんです」と今後を見据える。
 沢渡で農作業に励む傍ら「秋葉まつり」に参加したり、子供たちに柔道の指導をするなど、忙しい毎日を送っているが、大好きな所で暮らす岸本さんには笑みがあふれている。


(尾ア裕二)
 



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