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農業共済団体が発行している機関誌のご案内です。

2009年 8月


8月2週号
【室戸市】"レンタル牛"を養成――放牧で遊休農地解消へ

 遊休農地の解消と餌代などのコスト低減を目指し、室戸市佐喜浜町の山口信吾さん(44)は、牛の放牧に取り組んでいる。放牧牛の養成と増頭のため、簡易牛舎を新たに建設。また、電機牧柵にも慣れさせ、農家の以来に応じて牛を貸し出す計画だ。

    
▲「自分なりに地域活性化に一役買いたい」という山口さん
 「遊休農地10eに対し1、2頭を数日間貸し出す。いわばレンタル牛を目指しています」と話す山口さん。親子合わせて11頭の土佐褐毛和種を飼育する。
  遊休農地が増えている現状を寂しく感じていた折、放牧で解消しようという試みがあることを知り、「これなら自分にもできるのでは」と、牛の貸し出しに取り組むことを決めた。
  牛を貸し出すにあたっては、何としても頭数を増やす必要があり、それに伴い、新たに牛舎が必要となった。そこで、JAや県畜産振興課に協力を依頼。補助金などを利用しながら、今年3月に建設費を通常の施設の半額以下に抑えた簡易育成施設を放牧場の中に建設した。 
 骨組みには、工事現場などで使われる作業用の鉄パイプと連結器具を利用し、徹底的にコストを削減。突風などで飛ばされないように、格子状に組むなどして、強度を維持した。すべてがボルトで固定され、牛の育成ステージに合わせて施設内の広さや形状を調節できる造りになっている。
  また、遊休農地に放牧するためには、電気牧柵に慣れた経験牛が必要。そのため、現在、放牧場や自作地で電気牧柵を用いて放牧し、経験牛を育成中だ。
個人での経験牛の養成は、県内では珍しいとのことで、この取り組みに県の畜産振興課も「一石三鳥」と期待を寄せる。「土佐褐毛和種は放牧特性に優れており、遊休農地への放牧は、飼料コストの低減につながる上、イノシシなどの獣害を予防したり、里山の保全も期待できる。全国的には集落で取り組んでいる地域もあり、活性化に一役買っています。山口さんが地域の魅力を発信する一人になってくれれば」とエールを送る。
▲簡易育成施設。育成ステージに応じて広さや形状を調整できる仕組みだ

 今年の冬からは、自分の遊休農地で放牧し、その後、農家からの依頼に応じ、貸し出していく予定だ。また、遊休農地を借りて、放牧場とすることなども視野に入れているという山口さん。「まだ始まったばかり。頭数を増やしつつ、今後は地域の農家とも協力して、一歩一歩やっていきたい」と話す。

(坂本)






   

8月2週号
【本山町】観光自然農園目指して



    
▲自家製の刈り草堆肥とEMボカシ堆肥などで水稲「ヒノヒカリ」を栽培する北村さん

 「田舎の自然環境の中で農業をしたい」と、本山町の北村太助さん(75)・律子さん(80)夫婦は1994年、太助さんの定年退職を機に帰農し、無農薬で化学肥料を使わない自然農園づくりに取り組んでいる。
  北村さんは、まず農地30eと原野6e、わき水の出る土地を購入。水稲や野菜、果樹栽培の自給自足をはじめた。現在は田畑1・5f、果樹園3fに規模を拡大し、水稲や野菜のほか、ブルーベリー、桃、栗などを植え、季節の果物が実るまでになった。
  03年には「ワーキングホリデー」を開き、宿泊のできる丸太小屋も設置。これは、定年後の第二の人生として農業に興味のあるひとや、Iターン・Uターンして農業を目指している方人に、田舎暮らしや自然農業を体験してもらおうというものだ。
  水田は、3e当たり3万円の使用料で貸し出し、利用者は田植えから収穫までを体験。畑は無料で、利用者が区画分けして季節の野菜作りを楽しむ。また、宿泊施設の利用も無料だ。外風呂では、月や星を眺めながらつかれるほか、風呂・シャワー・洋式トイレ・冷蔵庫・炊飯器を完備。さらに北村さん自家製のみそや野菜などの提供も受けられるとあって、高知市などから、週末に訪れる利用者が増えはじめているという。
 「私ら夫婦の姿を見てもらって、田舎の自然を相手に農業をやってみたい、やってみようかなと感じてほしい」という北村さん。将来は観光自然農園を目指し、「まだまだ規模か小さいので、棚田などを購入して規模を拡大したい」と意欲を見せている。


お問い合わせ
▽真美農山(まみのやま)北村自然農園(TEL0887―76―2937)

(山中)    
    

8月3週号
【四万十町】イノシシ捕まえた? 人形で捕獲檻をPR



    

▲「最初は檻だけ飾っていたが、遊びで中にイノシシを置いてみた」と山下さん

 檻に捕らえられたイノシシを、四万十町見付の県道沿いで、発見!?――。よく見れば、南京袋におがくずをつめて作ったものだが、形といい雰囲気といい、本物のイノシシによく似ている。
  これは、同地区の山下雅夫さん(62)が、捕獲檻の宣伝のため製作したものだ。
  7年前から檻を自作し、今までに100頭以上の捕獲実績がある山下さん。「最初は、地元の人などにも材料費だけで作っていましたが、要望が増え、今年から有料販売にしました」
  檻は、格子状の鉄柵を利用したシンプルな構造だが、大物が暴れても壊れることはない。扉部分を取り外せば軽いため、移動が楽なのも大きなメリット。また、値段も、一般に販売されている檻が簡易のもので10万円ほどなのに比べ、5万円と手ごろだ。
 受注販売のため、購入希望者は、TEL0880‐22‐1305へ連絡を(捕獲檻の設置には、網・わな猟免許が必要)。

(川崎)
 

    

8月4週号
【南国市】有機野菜に家族でスクラム 父が築いた道を継承

    
 南国市三和の井上正雄さん(64)は、有機JAS認証を受けて、露地野菜60eと水稲100eを栽培する専業農家だ。5年前から、3人の子供たちが次々と就農し、家族総出で有機農業に取り組んでいる。


▲右から正雄さん、奈美さん(如正さんの妻)と愛香ちゃん(如正さんの次女・10ヵ月)、遥香ちゃん(如正さんの長女・3歳)、如正さん、智美さん
 「まさか、子供たちと一緒に農業ができるとは思っていなかった。まじめに取り組んでもらっているし、家族だから、遠慮なく話ができる」と正雄さん。
  最初に就農したのは、三女の智美さん(23)だ。「農業が好きで、県外の農業高校を卒業後、有機農業の研修を1年間受け、実家に戻った」という。次女の陽子さん(30)は「小売業に勤務していたが、安全なものを提供したいとの思いから転職した」と話す。
  昨年、帰農したばかりの長男・如正さん(27)は、「サラリーマン時代は帰宅時間が夜遅く、家族との会話や2人の子供とふれあう時間が取れなかった。自分なりに考え、時間が取れる仕事は農業だと思い、家業を継ぐことにした」という。
  一年間の経営スケジュールは、前年の農業手帳を見て、全員で話し合って決め、野菜は妻の初子さん(58)と陽子さん、智美さんが育苗から収穫までを任されている。正雄さんと如正さんは、水稲や力作業を中心に担当。如正さんは、収穫した有機野菜をスーパーなどに売り込み、販売場所を増やす役割も担う。
  現在収穫している夏野菜は、オクラ、キュウリ、ナスなど十種類。出荷先によって本数や重さが変わる。荷造りは、家族全員で日中に行い、スーパーや店に出荷する野菜にはJASシールを張っていく。荷造り後の配送は、夜は正雄さんが、朝は如正さんと智美さんの役目だ。
 少量多品目栽培を行っていることから、「品目ごと何日に何枚張ったかなど、日々の出荷数の集計や記録を付けるのも大変です」と初子さん。
▲JASシールを張った野菜を手に智美さん

  智美さんは、「有機農業は、除草剤を使わず草を刈ったり引いたりするので、特に夏は大変だけど、おいしさが違う。『井上さんちの野菜じゃないといかん』と言ってもらいたい」という。
 如正さんは、「父が築いてきたお客さんとの信頼関係を守っていきたい。今でも、有機農業に興味のある方が、草引きや虫取りの援農にきてくれています。今後もそういった方を増やし、顔の見える関係をつくっていきたい」と抱負を話す。

(松木)








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