本文へスキップ

農業共済団体が発行している機関誌のご案内です。

2010年 9月


9月2週号
【高知市】暖房機活用 二酸化炭素濃度を1万ppmに
     炭酸水灌水 pH調整し肥料吸収率向上

 トマト30eとナス10eをハウス栽培する高知市春野の雨森克弘さん(50)は、作物に二酸化炭素や炭酸水を与えている。食味の向上や収量アップにつながるほか、肥料の吸収率が高まり、コスト低減にもなるという。

    
▲自作した高濃度二酸化炭素装置を指さす雨森さん

 5年前までは市販の二酸化炭素発生装置を使用し、トマトの密植栽培を行っていた雨森さん。「樹勢ばかり強くなり、収量は思ったほど上がらなかった」と当時を振り返る。
  その後、暖房機(灯油使用)から排出する二酸化炭素をハウス内に導入する装置を自作。暖房機のバーナーをホームセンターで調達し、送風には換気扇を利用した。また燃焼室には煙突を付け、出口付近には邪魔板を装着し燃焼温度を高めている。製作費用は約5万円。
 この装置で、ハウス内の二酸化炭素濃度を1万ppmまで上げることができるようになった。「高濃度の二酸化炭素を吸収させることで、一本一本の木の能力が高まり収量が増えだした」と雨森さん。
 さらに、炭酸水発生装置を使い、炭酸を水に溶かした炭酸水と液肥を、点滴チューブで灌水する。炭酸水により土壌の水素イオン濃度(pH)を5〜5・5にすることで、肥料の吸収率が良くなり、肥料代は以前の約半分で済むという。
 初期投資として炭酸水装置に30万円、液化二酸化炭素が10e当たり年間3本(ボンベ1本当たり約5千円)必要となるが、「今では、収量アップと肥料代の節約で黒字経営になっている」と話す。
トマトは中玉の「フルティカ」を年2期作栽培する雨森さん。冬場は暖房と二酸化炭素を利用する。また炭酸水は栽培期間中活用することで果実の肥大が促進され、収穫量は約1・3倍に、品質も向上したという。

うま味成分増え果実の肥大促進
 炭酸水を利用する養液栽培について研究している高知大学の西村安代准教授は、「うま味成分のグルタミン酸が高まるし、果房の先端部分まで栄養分が届いて果実の肥大促進につながる。カルシウム(Ca)の吸収が高まることも分かった」と説明する。
 西村准教授から、炭酸水の情報提供や相談にも乗ってもらっている雨森さん。「環境のことも考えて、暖房機から排出される二酸化炭素の有効利用を始めた。液化二酸化炭素は石油の精製時などに発生するものを使い、また炭酸水にすることで、少量で効果を出している。これからも、環境に配慮した利用を続けていきたい」と話す。

(山中)
    
    



■戻る