11月2週号
【佐川町】紅茶で広げる 人・地域の輪
手作り体験ツアーが好評
県中西部の盆地にあり、50年ほど前は紅茶用の茶葉が盛んに栽培されていた佐川町尾川地区。若者が減少し高齢化が進んでいることから、地域おこしをしようと、この紅茶の販売や手作り体験ツアーに取り組んでいる。 |
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▲「来年の体験ツアーは5月中旬から開催する予定」と、会場となる「ふれあいの里尾川」で澤村会長(顔写真も) |
尾川地区では昔、紅茶種「はつもみじ」の栽培が盛んに行われていた。現在は4eの茶畑が一つ残るが、加工・販売のルートがなかったため、葉は管理のため刈り捨てていたという。
これに目をつけたのが、尾川地区活性化協議会(約50人)。澤村重隆会長(64)は「地元JAが緑茶種から紅茶を作っており、それに関わった人がメンバーにいて紅茶作りのノウハウがあった。町施設の『ふれあいの里尾川』を体験ツアーの会場に利用でき、茶畑の持ち主など地区の協力で実現できた」と話す。
まず、紅茶の手作り体験ツアーを昨年から実施した。パンフレットやダイレクトメールで参加者を募集。一度で8〜10人が、@収穫A萎凋(いちょう)B手もみC発酵D乾燥E袋詰めと、紅茶作りの全ての工程を体験できる。
茶葉の水分を取る萎凋の工程では、時間をかけて乾燥させる必要があることから、前日からスタッフが用意しておいた茶葉に参加者が収穫したものを加える。また、発酵を待つ2時間ほどで参加者自身が「マイ紅茶」のラベルを手書きするなど、工夫をしている。
今年は7月に2回開催し、参加者から「できた紅茶を友達に自慢したい」「いい経験になった。来年も作りたい」という声が寄せられたという。
また、今年の一番茶を地元JAで加工し50c500円で発売した。
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▲10月に発売された紅茶。11月中には「おがわ(和)紅茶」として新パッケージで販売を開始する |
澤村会長は「ツアーは来年も行うので、ぜひ多くの人に来てほしい。将来的には茶園を広げ、紅茶の量を増やしたい。またツアーも、回数を増やしたり、1泊で婚活も含めてやったり、親子体験ツアーにするなどの工夫をしていきたい」と話している。
▽問い合わせ先=ふれあいの里尾川(緯0889・22・1994)▽営業時間=9〜15時(月・水・金のみ)
(尾ア裕二)
11月2週号
【四万十市】養液土耕 手応えの初収穫
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▲妻の泰子さんと2人で収穫と誘引作業を行う祖父江さん。「将来的には、10e当たり15dを目指したい」と話す |
「地元の園芸農家から、作物を育てることの楽しさなどの話を聞くうちに転職を決意した」と話すのは、四万十市で、ピーマンの養液土耕栽培を始めた祖父江正男さん(38)。「法面(のりめん)工(山の斜面の吹きつけ作業)の会社に就職して約18年、充実した人生を送ってきたが、公共事業などの工事が減り、この仕事の先行きに不安を感じていた」という。
昨年8月から1年間、ピーマン栽培歴40年の丑本健さん(74)にノウハウを教わった。 今年9月に完成したレンタルハウス26eで、ピーマンの養液土耕栽培を開始。9月20日に約2300本の苗を定植した。
養液土耕栽培の利点は、元肥がいらず、根の張りが良く、栄養分の量をコンピューターで設定できるので省力化にもつながることなど。定植時には生育用の水溶性粉末肥料を、1連棟(5e)当たり300〜330gで約4分間、1日に4回施肥する。現在はその日の天候や土壌水分計で土の水分量を観察して適宜に、1連棟当たり700gを約3分間、1日に3回施肥している。
アザミウマ類の防除には、天敵昆虫のスワルスキーカブリダニ約5万頭を放飼し、労力低減を図る。
10月10日に初収穫を迎え、初めは2日おきに30`程度の収穫しかできなかったが、現在は収穫量も少しずつ増え、JA撰果場への出荷も安定してきた。11月からは、増産のため果菜用の水溶性粉末肥料に切り替えた。
「栽培し始めたばかりで、わからないことも多いので先輩方に教わっていきたい。将来的には、10e当たり15dを目指したい」と生産意欲を燃やす祖父江さんだ。
(平井優)
11月3週号
【本山町】特栽米 天空の郷 食味を徹底追及
山里の棚田を守り、おいしい米を作ろうと、本山町の特産品ブランド化推進協議会(40人、大久保誠二会長=45歳)では、特別栽培米「天空の郷(さと)」の栽培を3年前に開始。「甘くておいしい」と人気が上がった。今年の作付けは設立時の2倍の30fに拡大し、生産量は150dを見込んでいる。 |
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▲「今年は昨年よりも少し収量は少ないが、品質は良さそう」と話し合う、(右から)大久保さん、父・美鋭さん、農業公社事務局長の田岡学さん |
昔から稲作が盛んな本山町。標高250〜850bで、昼夜の温度差が大きくて霧が発生しやすいことから米の栽培に適する。しかし小規模な棚田が多く、畦畔(けいはん)が広く草刈りなど多くの手間と労力に加え、米価の下落が、山里の農業経営に追い討ちをかけた。
地元稲作農家は「このままでは後継者がいなくなってしまう。なんとかならないか」と財団法人本山町農業公社に話を持ち掛けたのがきっかけで、農家をはじめ行政などが一致団結して、特別栽培米(品種=「ヒノヒカリ」「にこまる」)のブランド化に取り組んできた。
特別栽培米は、化学農薬と化成肥料の使用を慣行の5割以下で栽培するもの。同協議会ではEMリサイクル肥料や完熟堆肥(10e当たり1dを限度)などで土壌を改良。施肥量は、土壌分析のデータを基にして圃場ごとに適正投与している。
ふるい目は1.9_
厳選した大粒にするため、選別機のふるい目を1.9_に設定する他、色彩選別機や食味分析機を導入して品質を高め、一定の基準以上だけを「天空の郷」とする。「設備購入には、県産業振興計画の地域アクションプランの助成を受けた」と、同農業公社の田岡事務局長は話す。
また、室戸海洋深層水のにがりを500倍に希釈して、穂ばらみ期、傾穂期、収穫1週間前の3回に分けて散布。1回の散布量は10e当たり100g。これで甘味のあるおいしい米に仕上げる。
コンテストで日本一に輝く
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▲天空の郷のポスター |
2010年11月には、静岡で開催された「お米日本一コンテスト」に応募し最優秀賞となり、栽培農家の増加や栽培規模の拡大にもつながった。
ヒノヒカリ130eとにこまる20eを両親と栽培している大久保会長は「土壌診断による土作りと、堆肥の過剰投与をしないことを心がけ、コツコツとおいしいお米を生産していきたい」という。
米では無名に近い高知県から、一躍有名になった本山町の「天空の郷」。販売先は東京の米屋をはじめ、県内の米屋、県のアンテナショップ、同町の「さくら市」、インターネットなど。2`1500円、5`3500円。最上級品は2`1600円と5`3800円。
(山中保広)
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