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農業共済団体が発行している機関誌のご案内です。

2012年 2月


    

2月1週号
【高知県】「ぽろっ」と渋皮がむける ニホングリ「ぽろたん」
     高知県の北幡地域、高知市などで栽培

 ニホングリは、チュウゴクグリよりも大果だが、渋皮がむけにくい性質がある。独立行政法人・果樹研究所が育成した、早生の新品種「ぽろたん」は、鬼皮に切れ目を入れて加熱処理を行うと、渋皮が簡単に「ぽろっ」とむけることから、ぽろたんと命名。2007年10月に品種登録された。高知県では、四万十川流域の北幡地域や高知市などで栽培されており、渋皮剥皮の労力低減や、剥皮の際に切り落とす部分がなく果実を丸ごと利用できるため、生産農家や加工業者などの期待が大きい。

    
    
▲前列は加熱処理したぽろたん。後列は生果
▲安定した栽培管理について話し合う西森さんと中平主任研究員

 高知市池地区で、ナシ「新高」を栽培していた西森忠博さん(76)。「収穫間際にカラスに食べられ、ナシ栽培を断念した」という。ナシ畑の跡地を平坦に整備した西森さんは、有効利用したいとの思いから、「手間が少なくて済む果樹はないか」と高知県果樹試験場に相談。ぽろたんを紹介してもらった。
  3年前に、ぽろたんの苗木50本を購入して定植。ヤマグリを台木に、ぽろたんを接いで苗木を育て、畝幅約6b×株間約4b間隔に順次植え付け、約2fのクリ園となった。今年から本格的に収穫できるくらいに樹(き)は成長している。
  収穫時期は9月上旬から20日くらいで、昨年、初めて収穫した西森さんは、「虫に食べられて、思うようになりませんでした。モモノゴマダラノメイガの防除を着毬(ちゃっきゅう)の時期に行い生産性を上げていきたいし、保育園児や小学生にクリ拾いを楽しんでもらえる観光農園にしたい」と話す。

授粉樹で収量安定
  同試験場落葉果樹担当の中平智章主任研究員は、「着毬痕のある太い枝を残して剪定(せんてい)することで、着毬数や2L以上の大果が多くなる傾向がある。ぽろたん導入にあたって最も注意が必要なのは、渋皮がむけない異なる品種が混ざってしまうこと。クリの安定生産には2品種以上の混植が必要だが、ぽろたんの授粉樹として、収穫時期が重ならない晩生品種の『美玖里』『石鎚』『岸根』や、外観で簡単に判別できる『利平』が適している。定植する際、列ごとに品種を変えることで受粉条件が良くなり、安定した収量が得られる」と説明する。

くりご飯や加工品に
  「簡便に調理できるという、現代の消費者ニーズに合った画期的なクリ。家庭での渋皮むきの手間が省け、大粒のくりご飯を簡単に作ることができる。切り目を入れ、オーブンなどで焼きぐりにしてもよい」と中平主任研究員。
  歩留まりの高さを生かし、煮崩れしにくい甘露煮の加工方法の研究なども進んでおり、「ぽろたんがクリ栽培の起爆剤となり、栽培面積の増加やクリの消費拡大につながれば」と期待する。

(山中保広)
▲樹と樹の間隔を広くすることで、防除や収穫作業の効率化を図っている













2月2週号
【大豊町】学校が担う地産池消
     地場産の魅力を知るきっかけに

 大豊町では、給食の食材を農家から直接仕入れるほか、栽培から販売までを学ぶ体験学習を行う学校もあるなど、地産地消の食育に力を入れている。学校栄養職員の竹政三世子さんは、「安心・安全でおいしいものを子供たちに食べてほしい。地場産品を知ることで、生産者への感謝の心を持ち、食や農業について考えるきっかけになれば」と話す。
    

▲竹政さんと、食育に携わる細川泉さん
▲1月25日のメニュー。ごはん、牛乳、はちきん地鶏の香味焼き、冬野菜サラダ、ダイコンとこんにゃくの煮物


 嶺北地域の学校では、地元の食材だけで作った給食を提供する「れいほくホクホクランチ」を昨年9月に行うなど、地産地消に取り組んでいる。
  特に大豊町では、各学校の規模が小さく出荷量の小さな農家からも仕入れるため、日頃から新鮮な地元の食材を積極的に使う。

  農産物の納品規格は設けず、小さくて皮むきなどの調理に手間がかかるサイズのもの以外は全て使用。コストパフォーマンスも良いという。
  生産者から直接仕入れることも多く、「時期によって、どこの生産者が何を栽培しているのか、だいたい把握しており、事前に必要な農産物を呼び掛けると直接持ってきてくれる」という。


生産者に感謝
  全国学校給食週間(1月24〜30日)には、特産品の碁石茶、はちきん地鶏、銀ぶろうマメなどを使ったメニューを提供。食べる前には給食に使われた地域特産品の紹介と、生産者への感謝が読み上げられる。食べ残しはほとんどなく、今までのおいしかったメニューを聞くと「碁石茶マフィン」「はちきん地鶏の香味焼き」「しし汁」「銀ぶろう寿司(ずし)」など次々と挙がるという。



体験学習で交流
 大田口小学校(坂本隆志校長・児童数16人)では、生産者との交流や地場産品について学ぶため、ユズの収穫、搾りやユズみそ造りなどの加工、「ひろめ市場」での販売などの体験学習などに取り組む。
▲食材の発表などの後、昼食をとる児童たち

 タマネギ、ダイコン、ハクサイなど20eを無農薬栽培し、給食センターに配送している上村美子さん(79)は、「未来を担う子供たちのために季節の野菜を届けています」という。
 竹政さんは、「高齢化が進む中で、地産地消の活動が少しでも生産者の励みになり、地域振興につながっていけば」と話す。

(近藤洋聡)






2月2週号
【香南市】農業は自分に合った生き方



▲「どの作業も面白く、今は家から園地までの移動時間がもったいない」と宗石さん

 「農業は、自分自身がやればやるほど収入が得られるのでやりがいがある。そこに責任も伴うが、自分の生き方には合っている」と、ユズを栽培する香南市野市町の宗石正志さん(37)。
 自衛隊を退職して介護士をしていた宗石さんは、同じく自衛隊退職後、物部町でユズを栽培していた山崎吉生さん(51)と知り合った。
 「収穫作業などを手伝う中で、農業の楽しさや、やりがいについて聞き、興味を持ち始めた。介護士として安定した収入を得ていたが、農業へのあこがれから転職を決めた」という。
 高齢のため園地管理に苦慮していた香美市物部町の農家を山崎さんから紹介され、昨年から約40eの栽培を始めた。今年には、山崎さんや香美市地域雇用創造協議会の仲介で、さらに40eの園地で栽培を始める予定だ。
 「昨年は両親の手伝いもあり、収穫作業などはスムーズだったが、黒点病など、栽培上の課題はまだまだ多い。先輩農家にアドバイスを受けている状態」という。
 農作業以外の時間は4人の子供の世話に追われるが、
「前の仕事より子供と接する時間が増えたことが喜びの一つ」という宗石さん。
「両親や家族のバックアップにすごく感謝している。また、物部町の人の温かさにふれ、自分は周りに恵まれていると感じている。いずれは先輩たちのように、立派なユズ農家になりたい」と夢を話してくれた。
山崎さんは「宗石君は真面目でやる気のある農家。若い人がユズを栽培することは大きな意義がある。頑張ってもらいたい」と話している。

(楮佐古正志)
    





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