1月4週号
【四万十市】暮らしは自ら守る 住民が出資し設立/椛蜍{産業
四万十市(旧西土佐村)大宮地区では、地域住民が日用品などを取り扱う「(株)大宮産業」(竹葉傳社長)を設立し、積極的に利用。この取組みにより過疎の集落の生活を守っており、県内外から注目が集まっている。 |
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大宮産業の職員(左から矢間さん、竹葉社長、岡山さん) |
愛媛県との県境に位置する大宮地区は、約130世帯の大半が稲作を中心とした農業を営んでいるが、65歳以上の住民が50l近い過疎の地区。
同地区で唯一、日用品のほかガソリンや軽油、農業資材を販売していたJA出張所が統合により廃止。
「車を持たないお年寄りも多く、日用品を取り扱う店舗が無くなってしまうのは深刻な問題でした」と竹葉社長。そこで、地区住民で話し合いを重ね、2006年、約100人が株主となり、700万円を出資して同社を誕生させた。
「赤字経営になったらどうなるのかなど、会社設立にあたっては不安の声もありましたが、自分たちでやらなくては集落の先はないという危機感のほうが増していました」と竹葉社長
。 地元住民の協力によって誕生した同社。「自分たちの会社なので、いつも利用するようと心がけています」と話すように、存続させようという意識も高い。
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地元住民になくてはならない存在となっている大宮産業 |
同社も「肥料や灯油など重たい物を持ち帰るのは大変なので、事前に連絡をいただければ、定期宅配日に配達をしています」と唯一正社員の矢間さんが話すように利便性を高めるため、無料宅配サービスを開始するなど、住民の要望を積極的に経営に生かす。
また、同社は地域住民の憩いの場ともなっている。店舗の一角にはコミュニティスペースを設置しており、「ほとんどのお客さんが顔見知りなので、自然と会話が始まります。近況を聞いたり、ご家族の様子をうかがったり。些細なことでも会話を楽しめるのが、こういう集落のお店なのかなと思いますね」と話すのはパート従業員の岡山さん。おしゃべりだけを楽しんでいく常連さんも多いとのこと。
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「地産外商に力を入れたい」と竹葉社長 |
ブランド化をすすめている「大宮米」 |
地域になくてはならない存在となった同社。更なる取り組みとして、地産外商に力を入れている。
同地区で生産されるコメは食味が良いことから「大宮米」としてブランド化。高知市内や四万十市内の学校の給食用に契約販売するなどし、大宮米の地域外への販路拡大に力を注いでいる。今後は都市部に大宮ファンを増やす活動を行い、野菜などとセットで大宮米の通信販売を行うことを検討しているとのこと。
「農業は大宮地区の基幹産業。農業が行き詰まれば、集落の経済も成り立たない。農業収入を上げていくためにも、地区外の販路を増やしていきたいですね」と竹葉社長。地産外商で地区のライフラインを守っていく方針だ。
(今城直幸)
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